自分の国と住んでる国のあいだ

一年の半分が過ぎた。今だに論文を書き続けている。というか、一時停止している。日本に関する大きな展示会で4日間アテンドをしてきた。アニメやビデオゲームが大好きな人が大半で、コスプレをしたりする人もいる。コスプレした人たちは、お互いに知らない同士でも写真を取り合って仲良く交流している。私が働いたのは日本の観光ブースで、目の前には大きな舞台とおにぎりやさんやカレー屋さんが店を出していた。JAPAN EXPOはヨーロッパでも最大級の日本に関するイベントで、漫画、アニメ、ゲーム、アイドル、観光、文具、食に関するいろんなブースが、大きな会場にひしめいてクーラーもあまり効かない中、暑さにも関わらずお祭り騒ぎをする4日間である。アンケートをとれば、日本が大好きだとか魅力的な国であるとか褒め言葉が並ぶ。旅行で行ったり、まだ足を踏み入れていない人たちはきっと、私が見ている日本とは違った面をみているのだろう。自分の生まれた国のことを、そんな風に言ってもらえるのはとても嬉しいことだけど、いたく恐縮してしまうのは、彼らとの認識の差があるからだろう。サービス残業、保育園の不足、女性蔑視、政治への関心の低さ、文化主義、なんて挙げてたら、きっと海外に住んでるあなたには日本の実情がわからないなんていう日本からの批判が聞こえてきそうだ。日本を特別視しているのは、日本人だけではない。展示会にきている外国人やタクシーの運転手さんだって、日本はどこどことは違うとか、日本を褒めちぎる。そういう言葉を聞くたび、表現できないもどかしさを感じる。それはきっと、生まれ育った国から出て、いろんな物事の見方を知って、こうした方がもっと良くなるのに、とか、何でこのままで平気なんだろう、という素朴な疑問を解決できていないからだろうと思う。フランスに来ても、お米を研いで日本食を作るし、日本語が母国語だからこその仕事もたくさんある。「日本が大好き!」と心からいう人々に対して、申し訳なさを感じるのは、二十数年生きた日本のことを彼らよりもよく知っているからかもしれない。私は、ここフランスに住んで数年、フランスが大好き!と思ったことは一度もない。面倒臭いなぁとか、何でこうなるんだろう、というむしゃくしゃを感じながら、まぁしょうがないかと思えるから、ここに住み続けてるんだと思う。