誕生日

修士1年の論文が書き終わった。色んな人に助けてもらって、全部で75ページの論文になった。書く前は空恐ろしくて、得体の知れないものだったけれど、終わってみたらなんてことはなく、案外スラッとできてしまったという感じだ。多分、終わった直後の開放感もあってそんなふうに思うのかも知れない。それから、今日は誕生日だ。空が晴れわたっている。小鳥がチュンチュンと一生懸命に鳴いている。車のエンジンのかかる音がする。27歳でフランスに着いた時に、私はこんなことを想像していただろうか。結果は後から付いてくるというのは本当に言い得て妙で、点と点が繋がるようにできているのか、私自身がうまいことやってのけたのか、はたまた運命というものがあるのか、さっぱり分からないけれど、とても身軽に誕生日を迎えられたことに感謝である。

昔は、自分が何かをやってのけたという感覚がないととても不安を覚えたものだった。やった価値とか、成果とかそんなものから安心を得たかったのかしら。今ではよく分からないけれど、もちろん今だって不安は押し寄せたりするけれど、しっかり立てているんじゃないかと、思う。

印刷屋さんのお姉さんが、「Bon courage! Passez une très bonne journée!」と言って、装丁の終わった私の論文を渡してくれた。表紙を見て、悟ってくれたのだろう。その力のこもった目がとても嬉しかった。

担当教諭の先生も、「Félicitations!」と言って迎えてくれた。よく頑張りましたよ。第一次期限で出すのは貴方ぐらいじゃないでしょうか。と。私は、もう一人提出した人を知っているのだけれど。修士2年も続けられるでしょう、とおっしゃられて、このまま担当を続けてくれるとも言ってくれた。

私は、人に恵まれている。私も、周りの人に小さくでも笑顔を勇気を持ってもらえるきっかけを与えられるような人間でありたい。そのためにも、私自身も、小さな幸せを見つけながら、笑いながら泣きながら、生きたい。自分ならできると信じながら。

 

おめでとう。そして、産んでくれてありがとう、お母さん。